せっかく外壁を塗り替えたのに雨樋だけ茶色くサビていて台無し。
現場でよく聞く声です。
軒天が黒ずんで「塗り直したばかりなのに古びた印象になった」と落胆する施主様。
破風板の塗膜が剥がれて強風で雨水が吹き込み、気づけば小屋裏までカビが繁殖。
付帯部は家を守る“脇役”だからこそ、痛みを放置すると雨漏り・シロアリ・構造腐朽へ一直線――見た目より深刻なトラブルに繋がります。
本記事では、付帯部の役割と劣化メカニズムから、部材別の最適塗料、施工時の注意点、外壁と同時に行うメリットまで網羅的に解説します。
読み終わる頃には「次の塗装では付帯部をどうすべきか」がクリアになるはずです。
付帯部とは?外壁・屋根以外の“守りの要”
外壁塗装の見積書でよく見る「付帯部」の範囲
外壁や屋根のような大面積ではなく、軒天・雨樋・破風板・鼻隠し・幕板・笠木・庇・水切り・換気フード・雨戸/戸袋・シャッターボックスなど家の細部を指します。
これらは形状も素材もバラバラ。木部・鉄部・塩ビ・ガルバリウム・アルミなど、多様な下地に合わせた塗装仕様が必要です。
付帯部の3大役割
防水・防食
付帯部の中でも特に重要なのが、軒天・破風板・鼻隠しなど、屋根まわりの部材です。
これらは屋根の端部を保護する役割があり、雨風の吹き込みを防ぐ第一のバリアのようなものになっています。
もしこの部分が劣化して塗膜が剥がれてしまうと、そこから雨水が入り込み、屋根下地や構造体に水が染み込んでしまうことも。
それにより木材が腐食したり、シロアリ被害につながるケースも少なくありません。
だからこそ、これらの付帯部には定期的な塗装による防水・防食対策が必要不可欠です。
排水・通気
雨樋や水切り金物といった付帯部は、雨水を効率よく排水することで、家を湿気や雨染みから守る重要な役割を担っています。
たとえば水切り金物は、サイディングと基礎の境目に取り付けられ、壁の中に雨水が入り込むのを防ぎます。
目立たないパーツですが、ここが詰まったりサビたりして機能しなくなると、雨水が溜まり、外壁材の裏側や床下に湿気が溜まってしまうリスクが高まります。見
落としがちな箇所ほど、建物の寿命を左右する大事な部材なのです。
意匠性
付帯部は、機能性だけでなく建物の見た目にも大きな影響を与えています。
たとえば窓周りのモールや幕板などは、外壁のアクセントとして存在感を放つ“額縁”のような役割を果たします。
これらの色がくすんでいたり、塗膜が剥がれていると、外壁全体がくたびれて見えてしまうことも。
反対に、細部までしっかり塗装されていれば、建物全体がシャキッと引き締まり、新築同様の印象を与えることができます。
つまり、付帯部は“家の完成度”を決定づける仕上げの要でもあるのです。
ワンポイント
付帯部は細い金物や木材が多く、紫外線・雨風をダイレクトに受けるため、外壁より早く劣化することがほとんどです。
付帯部塗装が必要な3つの理由
素材を長持ちさせ構造躯体を守る
外壁の裏側で雨水を受け止める破風板が腐れば、屋根垂木まで湿気が回ってしまいます。
金属雨樋の赤サビは数年で穴あきを起こし、オーバーフローが基礎を濡らしてシロアリ呼び込みの原因に。
塗膜は“防水膜”として素材をラッピングし、腐食因子をシャットアウトする生命線です。
美観バランスで資産価値を守る
外壁は20年グレードのフッ素樹脂、付帯部は10年持たないウレタン。
このミスマッチが“色褪せのチグハグ”を招きます。
特に軒天・雨樋は目線に近く、色ムラやチョーキングが想像以上に目立つ箇所。外壁と同質感・同ツヤでそろえることで、築年数を感じさせない外観をキープできます。
外壁塗装と同時施工でコストを圧縮
別々に足場を組むと平均15〜20万円の二重負担。職人の段取りも増え、現場管理費が跳ね上がります。
外壁+付帯部を一括発注すれば、足場・人件費をまとめてカットできるうえ、塗膜の色合わせ・工程管理も一元化でき品質が安定します。
部材別 劣化症状と推奨塗料早見表
アルミ製雨戸・ステンレス戸袋は耐食性が高く塗装不要なケースが多い。
施工の流れと下地処理のコツ
高圧洗浄とケレンで“密着率100 %”を確保
付帯部は凹凸が多く汚れが溜まりやすいので、外壁より長めの洗浄時間が基本。
鉄部は電動サンダーで白サビまで落とし、木部はペーパー掛けで新しい木肌を出してから防腐剤を浸透させます。
下地処理を省くと、高級塗料でも1年足らずで剥がれる事例は後を絶ちません。
素材ごとに違うプライマー選定
付帯部の素材は実に多種多様。だからこそ、プライマー選びは素材ごとに最適なものを使い分ける必要があります。
どんなに優れた上塗り塗料でも、プライマーの選定を誤れば、密着不良や剥がれ、変色といったトラブルに直結します。
以下、代表的な素材と適したプライマーの組み合わせを紹介します。
木部:呼吸を妨げない浸透型エポキシが基本。
木材は呼吸する素材。
表面を密閉してしまうような塗料を使うと、内部に湿気がこもり、塗膜の膨れや剥がれを招く原因になります。
そのため、木部には木の繊維にしっかり浸透する“浸透型エポキシプライマー”が基本。
これにより、塗料がしっかり食いつき、耐久性と防腐効果を両立できます。とくに古い木材や一度でも塗装された部分には、目粗し後に浸透プライマーを使うことで、長期的な塗膜安定性が期待できます。
鉄部:錆転換剤入りエポキシで耐食性アップ。
鉄部はサビとの戦いです。
表面のサビをいくら落としても、内部に残る酸化鉄の影響で再発するケースも多く見られます。
そのため、鉄部には防錆効果の高いエポキシ系プライマーと錆転換剤入りの製品を使用すると効果的です。
これにより、わずかに残った赤サビの進行を抑えつつ、塗料との密着を高め、塗膜寿命を延ばすことができます。
屋根板金やシャッターボックス、庇などの金属部位には必須の工程です。
塩ビ雨樋:可塑剤ブリードを抑える専用プライマー必須。
塩ビ製の雨樋などに油性塗料を直接塗ると、可塑剤が塗膜ににじみ出てベタつきや変色を引き起こす“ブリード現象”が発生します。
これを防ぐためには、ブリード抑制タイプの専用プライマーを使用するのが鉄則です。
プライマーが塩ビ表面の可塑剤を封じ込め、上塗り塗料の安定性を保ってくれます。
雨樋は意外と目立つ部分なので、施工不良によるテカリ・ムラ・剥がれを防ぐためにも、このひと手間は欠かせません。
塗装工程例(雨樋の場合)
洗浄・乾燥
まず最初に行うのが、雨樋の洗浄です。
長年の雨水で流されたホコリ、苔、油膜、排気ガスのススなどが付着しているため、高圧洗浄や中性洗剤を用いた手洗いでしっかり除去します。
汚れが残っていると、プライマーや塗料の密着が極端に落ちるため、塗装後の剥がれにつながる原因になります。
その後、しっかり自然乾燥させて水分を抜くことも重要です。
湿気が残ったまま塗装すると、塗膜の浮きや白濁が発生するリスクがあるため、乾燥工程は妥協せず慎重に行いましょう。
180番手ペーパーで目荒らし
塩ビ製の雨樋は表面が滑らかでツルツルしており、そのまま塗料を塗ってもしっかりと密着せず、時間の経過とともにパリパリと剥がれてしまう恐れがあります。
そこで、180番程度のサンドペーパーを使って“目荒らし”という処理を行います。
この工程では、表面に細かな傷をつけて塗料がしっかり食いつけるような下地を整えることが目的です。
力加減は強すぎず、均一な研磨を意識するのがポイント。
古い塗膜が残っている場合は、完全に剥がしてから行うようにしましょう。
塩ビプライマー1回
塩ビの雨樋には、専用のプライマーを塗布することが絶対条件です。
これは、塩ビが持つ“可塑剤”という成分が、塗膜にじわじわと移行してしまい、時間が経つとベタつきや変色(ブリード現象)を引き起こすのを防ぐためです。
塗装後のトラブルを防ぐためにも、必ず「塩ビ対応」と記載されたプライマーを1回塗布し、規定の乾燥時間を厳守しましょう。
スプレータイプの簡易製品ではなく、刷毛やローラーで均一に薄く伸ばせる業務用プライマーが安心です。
上塗りシリコン2回(膜厚計で80μm以上)
上塗りには、屋外耐候性と柔軟性のバランスに優れた「シリコン系塗料」を使用するのが一般的です。
1回目の塗布が乾燥したのを確認してから、2回目の重ね塗りを行うことで十分な塗膜厚(80μm以上)を確保します。
この厚みは、耐久性だけでなく、色ムラのない滑らかな仕上がりを得るうえでも重要です。
ただし注意したいのは、「厚すぎてもダメ」という点です。
200μmを超えるような厚膜をつけてしまうと、塗料の柔軟性が失われ、特に樋バンド部分などの可動箇所で塗膜にひび割れが生じやすくなります。
塗装後にバンドで締め付ける際にパリッと割れてしまうのは、こうした厚膜の典型的なトラブルです。膜厚管理は塗装の完成度を決めるプロのこだわりポイントです。
付帯部塗装の注意点とよくある失敗例
・シャッタースラットを塗って故障
可動部分は基本非塗装。どうしても色合わせしたい場合は薄膜の吹き付けで。
・アルミ製雨戸を強制塗装しチョーキング
アルミは塗膜が乗りにくく、数年で白粉化しやすい。クリーニング仕上げで十分な場合が多い。
・木製破風に硬質塗料を塗って割れ
木の伸縮を追随できる弾性塗料を選定。
失敗を防ぐコツ
①素材を正確に見極める
付帯部には木、鉄、アルミ、塩ビ、ガルバリウムなどさまざまな素材が使われており、それぞれに適したプライマーや塗料を選定する必要があります。
たとえば、塩ビの雨樋に油性塗料を直接塗ると、可塑剤の影響でベタつきや変色が出る「ブリード現象」が発生しますし、アルミには一般塗料が密着しづらくすぐに剥がれるリスクもあります。
素材を誤認したまま施工すると、数ヶ月で塗膜がめくれるようなトラブルに繋がるため、まずは素材を正確に見極めることが成功の第一歩です。
②可動部・非可動部を区別
シャッターボックス、戸袋、雨樋などには、**動く部分(可動部)と動かない部分(非可動部)が混在しています。
これらを区別せずに塗装すると、可動部に塗膜が入り込んで動作不良を起こしたり、稼働時に塗膜が割れるなどのトラブルが起こります。
たとえば、シャッターのスラット(可動部)を塗ってしまい、巻き込み時に塗装がバリバリと剥がれるというのは典型的な失敗例です。
可動部は基本的に塗装せず、周囲の固定部のみを丁寧に仕上げることで、美観と機能の両立が図れます。
③塗布量・乾燥時間を厳守
塗料には「適切な塗布量」「乾燥時間」「重ね塗りの間隔」など、メーカーが定めた施工基準があります。
これを守らずに塗料を厚く塗りすぎたり、乾ききる前に次の工程に進んだりすると、内部に湿気がこもって膨れや剥がれの原因になります。
特に雨樋や破風などは、乾燥不足のまま仕上げると、気温差による膨張収縮に耐えられず、塗膜がひび割れることも。「早く終わらせたい」と焦らず、1工程ごとの乾燥時間をしっかり確保し、均一な塗膜を丁寧に重ねることが、長持ちする塗装の秘訣です。
外壁と同時に施工するメリット
コスト面
何といっても「足場費用の節約」が大きなポイントです。
一般的な住宅で足場を設置するだけでも約15万円~かかります。
外壁と付帯部を別々のタイミングで施工すると、この足場費用が都度発生してしまいます。
しかし、同時に施工すればこの費用は1回で済み、大きなコストカットにつながります。
また、塗料の発注も一括で行えるため、まとめ買いによる単価の割引やロスの削減も可能です。。
仕上がり面
外壁と付帯部を別々に塗装すると、塗料のロットやタイミングの違いにより、色味に微妙な差が出てしまうことがあります。
とくに光の当たり方によって色ブレが目立つようになると、仕上がりに違和感が生じる原因に。
同時施工であれば、同じロット・タイミングで調色・塗装ができるため、色味のバラつきがなく、統一感のある美しい外観に仕上がります。
メンテナンス面
別々に施工すると、次回の点検や再塗装のタイミングがずれてしまい、毎年どこかしらの補修が必要になるケースもあります。
一方で同時施工なら、次回のメンテナンス周期を一括で管理できるため、将来的な維持管理計画がとてもシンプルになり、施主様の負担も大きく軽減されます。
付帯部は外壁塗装の際に
外壁塗装の真価は付帯部の仕上がりで決まるといっても過言ではありません。
素材・劣化・用途に合った塗料と下地処理を選び、外壁とワンセットでメンテナンスすることで、耐久性・美観・コストの三方良しが実現します。
付帯部塗装を成功させるチェックリスト
見積書に「付帯部塗装」の内訳があるか
見積書の中に「外壁塗装一式」や「建物塗装一式」といったざっくりした表現しかない場合、どこまで塗るのか、どの部材が対象なのかが不明瞭になりがちです。
信頼できる施工店であれば、軒天、破風板、雨樋、幕板、シャッターボックスなどの付帯部ごとに明確な項目が記載されています。
さらに「どの部材を塗装し、どこは対象外なのか」まで説明してくれる業者は、工程に対して責任を持っている証拠です。
不安な場合は、見積りの内訳について質問してみると、対応姿勢も見えてきます。
部材ごとの素材判定と塗料選定根拠を確認したか
付帯部には、木部・鉄部・アルミ・塩ビ・ガルバリウムなど、素材ごとに異なる処理と塗料選定が必要です。
そこで大切なのが、「その部材が何でできているか、なぜこの塗料を選んだのか」という判断根拠を説明できる業者かどうか。
たとえば、塩ビ製の雨樋に対しては専用プライマーが必要ですし、鉄部には防錆プライマーを使わないと剥がれやサビの再発に繋がります。
「この素材にはこの塗料を使います」と明確に説明してくれるかどうかが、長持ちする施工の分かれ道です。
外壁と同時施工のメリットを提案してくれるか
外壁や屋根の塗装を行う際、足場を組むタイミングで付帯部も一緒に塗装するのがコスト面でも効率面でもベストです。
優良な施工店は、「付帯部も一緒に施工した方がトータルで安く、見た目の統一感も出る」といった提案をしっかりしてくれます。
逆に、ただ「言われた通り塗ります」だけでは、将来的に見た目のチグハグ感や塗り忘れに繋がる恐れがあります。
建物全体のバランスを見ながら、最適なタイミングと内容を提案してくれる施工店こそ、信頼に値するパートナーです。
「付帯部塗装をしっかりやってくれる会社かどうか」は、最初の見積りや説明の段階で見極められます。
内訳が明確か・素材と塗料の相性を理解しているか・建物全体を俯瞰した提案があるか。
この3つの条件をクリアしていれば、10年後も塗膜が色褪せず、家の美観と耐久性をしっかり保てる可能性が高いです。
「細部に手を抜かない業者は信頼できる業者」。ぜひ、チェックリストを活用して失敗しない外装リフォームを実現してください。