しろくまコラム SHIROKUMA COLUMN
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コラム
立平葺き屋根に雪止めは必要?落雪被害を防ぐ正しい取り付け方法と注意点
冬になると、朝の静寂を破るように「ドサッ!」と大きな音が響くことがあります。
屋根から滑り落ちた雪の塊が、車の屋根や植木、玄関前を直撃するあの音。
驚くだけでなく、ヒヤリとする瞬間でもありますよね。
特に立平葺き(たてひらぶき)屋根は、金属製で表面が非常に滑らか。
そのため、一度雪が動き出すと、止まることなく一気に落ちてしまいます。
「うちは屋根の傾斜が緩いから大丈夫」「雪が少ない年もあるし…」と油断していると、落雪による事故や破損、さらには近隣トラブルにも発展しかねません。
この記事では、立平葺き屋根における雪止めの必要性から、金具の種類・設置方法・注意点まで、専門業者の現場目線でわかりやすく解説します。
もしご自宅や会社の屋根が立平葺きなら、ぜひ最後まで読んで、後悔しない雪対策の第一歩を踏み出してください。
目次
立平葺き屋根に雪止めが必要な理由
立平葺き屋根は、板金を縦方向に葺き上げる金属屋根の一種で、雨仕舞いがよく、デザインもスタイリッシュな人気屋根材です。
しかしその一方で、表面のツルツルとした金属特性により「雪が滑りやすい」という大きな特徴があります。
積もった雪が昼間の陽射しで少し溶けた瞬間、一気に落下してしまう。
そんな性質があるため、雪止めを設置しないまま放置すると以下のような被害を引き起こします。
人身事故の防止
最も深刻なのが、人への落雪事故です。
玄関先や駐車場、歩道側に雪が落ちると、通行人や家族が直撃する危険性があります。
特に雪が固まって凍結している場合、1塊でも相当な重量になり、頭上から落ちれば大事故につながります。
雨樋の変形・破損
雪止めがない屋根では、雪が滑る勢いで軒先の雨樋を押し潰してしまいます。
樋が歪むと雨水が正しく流れず、外壁や基礎部分に水が伝ってシミや劣化を招くことも。
建物や庭木の破損
庭の植栽やカーポート、フェンス、窓ガラスなども落雪の直撃を受けやすい位置にあります。
特に立平葺き屋根は落雪スピードが速いため、雪止めがないと雪の塊が跳ねて二次被害を引き起こすことがあります。
近隣トラブルの回避
住宅が密集している地域では、落雪が隣家の敷地へ飛び込むトラブルも少なくありません。
「うちの車が壊された」「雪が塀を押して倒れた」など、雪が原因の近隣トラブルは実際に多発しています。
太陽光パネルの保護
立平葺き屋根に太陽光パネルを設置している場合、雪がパネルの表面を滑り落ちやすくなります。
その勢いで配線や金具が損傷するケースもあるため、雪止めはパネルを守る意味でも欠かせません。
こうした理由から、寒冷地や中山間地域では「立平葺き屋根=雪止め必須」と考えておくのが基本です。
立平葺き屋根に使われる雪止めの種類
一口に雪止めと言っても、立平葺き屋根の形状(ハゼ式・嵌合式)や地域の積雪量によって適したタイプが異なります。
ここでは代表的な2種類を紹介します。
| 種類 | 特徴 | メリット | 使用地域の目安 |
|---|---|---|---|
| 羽根付きタイプ(ハゼ掛け金具) | ハゼ部に挟み込んで設置する一般的なタイプ | 屋根を傷つけず後付け可能、見た目もスッキリ | 積雪量が中程度までの地域 |
| 雪止めアングル | L字の金属アングルを複数の金具で固定するタイプ | 広範囲で雪をせき止める強力仕様 | 豪雪地帯や勾配が急な屋根 |
羽根付きタイプは後付けできる点が魅力で、既存屋根の補修や追加設置にも対応可能です。
一方で、雪止めアングルは施工費がやや高くなるものの、重い雪にも耐えるため「落雪ゼロを目指す」地域に最適です。
雪止めの設置方法と施工手順
立平葺き屋根に雪止めを設置する際は、屋根材の「ハゼ」と呼ばれる折り目部分を利用して金具を固定します。
ハゼの形状や強度を正しく把握した上で施工しないと、屋根を傷めたり、金具が外れたりする恐れがあります。
1. 位置決め
まずは金具の取り付け位置を決めます。
基本的には、軒先から数枚目の屋根材のハゼ部分に設置し、雪が集中しやすい範囲を抑える配置にします。
均等な間隔で設置することで、雪の荷重が一箇所に偏らず、屋根全体で分散できるようにします。
2. 金具の固定
金具はハゼ部分に挟み込み、ボルトとナットでしっかりと締め付けます。
ただし、締め付けすぎると屋根材が変形してしまうため、金属の“しなり”を残す程度が理想。
締め込み後には必ず手で確認し、ガタつきがないかをチェックします。
3. アングル材の設置(雪止めアングルタイプの場合)
豪雪地帯などでは、雪止めアングルを金具に取り付けて雪の滑落を面で抑えます。
このとき、アングルの水平を取ることが非常に重要。少しでもズレがあると、雪が片側に寄り、屋根への負担が偏ります。
このように、立平葺き屋根の雪止め設置は一見シンプルでも、実際には屋根構造の理解と繊細な調整を要する作業です。
設置時の注意点と失敗しないためのポイント
立平葺き屋根に雪止めを設置する際には、以下のような点に注意が必要です。
専門業者に依頼する重要性
立平葺きは屋根ごとにハゼ形状や金具規格が異なるため、経験のない施工者では誤った金具を選んでしまうことがあります。
また、金具の締め付けトルクや設置間隔も屋根勾配や雪荷重によって変わるため、地域と屋根構造を熟知した専門業者に依頼することが安全確実です。
DIYでの設置は、高所作業の危険性や防水性低下のリスクを考えるとおすすめできません。
新築・リフォーム時に設置するのがベスト
屋根の葺き替えや新築時に雪止めを設置すれば、屋根材と一体化したより強固な施工が可能です。
後付けよりも見た目がすっきりし、メンテナンス性も向上します。
後付け設置も可能
すでに完成している屋根でも、ハゼ掛け式の金具を使用すれば後付けが可能です。
ただし、屋根材の状態が悪い場合(錆びや歪みなど)は、ハゼが正常に噛み合わず、別の固定方法を検討する必要があります。
雪止め設置に関する法律と責任
「雪止めは義務ですか?」と質問を受けることがありますが、現行の法律で設置が義務付けられているわけではありません。
ただし、民法第717条では「土地の工作物の設置・保存に瑕疵(かし)があり、他人に損害を与えた場合は賠償責任を負う」とされています。
つまり、落雪で他人の車や人に被害を与えた場合、所有者に責任が問われる可能性があります。
また、雪の多い自治体では「落雪防止に関する条例」が設けられている地域もあり、施工の際には自治体のルールを確認しておくことが大切です。
雪止めの設置は“法律で強制されていない義務”ではありますが、“安全を守るための責任”として考えるべき対策なのです。
まとめ
雪止めは、ただの金具ではありません。
それは「住まいを長く守るための備え」であり、「家族や隣人を守るための思いやり」です。
立平葺き屋根の美しいラインを損なうことなく、確実に雪を制御する。
そんな施工ができるのは、経験豊富な職人だけです。
弊社では、
・ハゼ形状に合わせた専用金具の選定
・積雪量に応じた最適な設置ピッチの計算
・美観と防水性を両立した施工
これらを一つひとつ丁寧に行い、「見えない部分こそ手を抜かない」ことを徹底しています。
落雪による不安を抱えたまま冬を迎えるのではなく、今のうちにしっかりと備えることで、家も家族も安全に過ごせます。
もし、「うちもそろそろ雪止めをつけた方がいいかな?」と思ったら、まずは屋根診断だけでもお気軽にご相談ください。



















